お子さんの将来への心配事の1つとして、「就職」が挙げられる方が多いかと思います。
就職できるか、仕事が続けられるかなど就職に関しても多くの心配事がありますが、その心配事のカギとなるのが、「職場での人間関係」です。
職場での人間関係作りが上手であれば採用もされやすく、職場定着も問題ないかと思います。
今回はそんな職場での対人スキルについてお話ししたいと思います。
現在、放課後等デイサービスや就労支援施設で、日常生活においての対人技能を訓練する手法としてソーシャルスキルトレーニング(SST)が有名な訓練方法になるとは思います。
しかし、職場に特化した対人技能訓練として、ジョブスキルトレーニング(JST)というプログラムがあります。
このジョブスキルトレーニングを学ぶことによって、職場での対人コミュニケーションが学べ、現在働いている方だけでなく、これから就職を控えている方や、就職へ向けて活動される方にも役立ちます。
ジョブスキルトレーニング(JST)とは
ジョブスキルトレーニングとは、職場対人技能トレーニングといい、 Job Skill Trainingの頭文字を取ってJSTとも呼ばれます。
職場での一般的に起こり得る対人コミュニケーションの課題について複数人でロールプレイや意見交換を行いながら課題を解決していくトレーニングです。
職場でにおいての対人スキルとなりますので、ソーシャルスキルトレーニングの就労版ともいえます。
ジョブスキルトレーニングの目標は、練習したスキルを職場での実践として般化することであり、
方法などはソーシャルスキルトレーニングと似ていますが、上司への報連相など職場に特化した場面でのトレーニングなのが特徴です。
ジョブスキルトレーニング(JST)をおこなっているところ
こうしたジョブスキルトレーニングは、障害のある方向けにソーシャルスキルトレーニングと併せて、就労移行支援や就労継続支援の事業所でもおこなわれています。
また、最近では将来的な働く力を身に着けることを目的とした「就労準備型放課後等デイサービス」でも実施されており、早期から働くことについて学ぶことができます。
下記のそれぞれの事業所について詳しく説明してありますので、参考にしていただけたらと思います。
ジョブスキルトレーニング(JST)をおこなう上での注意点
ジョブスキルトレーニングをおこなう上で、大切なことがいくつかあります。
・実施される意義や背景などの説明。
・テーマは、どの職場でも共通する場面や必要になるスキルを選ぶこと。
・個々の認知特性のアセスメント結果に基づいた支援をすること。
・モデリングを通して分かりやすくスキルの説明をすること。
・ワークシートやボードなどを使用しポイントを明示や焦点付けをする視覚的支援を行うこと。
これはジョブスキルトレーニングの効果をより高めるためであり、ソーシャルスキルトレーニング同様、ただおこなうだけではあまり効果がないためです。
・テーマの意図や学ぶスキルを明確にする
・参加する全員が共感できる内容が望ましい
・ソーシャルスキルトレーニング同様に場を仕切るリーダーとサポートの子リーダーなどの役割分担がされていると尚良い
ジョブスキルトレーニング(JST)の流れ
テーマに関してみんなが実際に困っていることを話し合う
実際に対応例を考える
ロールプレイ(悪い例)を実施する
ロールプレイ(悪い例)の改善点をみんなで話し合う。
ロールプレイ(良い例)を実施する
全員でロールプレイ(良い例)を演じる
感想・振り返り等
大まかな流れとしてはソーシャルスキルトレーニングに非常に似ているのですが、
テーマやロールプレイを行う場面は職場における内容を選定していているので就労における対人スキルに特化していますので、職場での般化がしやすいです。
ジョブスキルトレーニング(JST)のテーマ
・挨拶する
・報告する
・質問する
・確認する
・職場で謝る
・遅刻した時の対応
・残業を引き受ける
・残業を断る など
・人のそばを通る時の対応
・会話を遮って要件を伝える
・休憩時の会話 など
ソーシャルスキルトレーニング同様に本題の前に自己紹介や最近あった出来事などの簡単なスピーチや、
他者と協力出来たりコミュニケーションが取れるような簡単なゲームなどのウォーミングアップもおこなうことがあります。
ジョブスキルトレーニング(JST)はソーシャルスキルトレーニング(SST)と何が違うの?
もともとジョブスキルトレーニングはソーシャルスキルトレーニングを参考にして作られた職場対人技能トレーニングですので、
ジョブスキルトレーニングをやることは職場の対人関係においてはソーシャルスキルトレーニング以上の効果を得ることができます。
その理由としては以下のようなジョブスキルトレーニングならではの利点があるためです。
・ジョブスキルトレーニングで学んだことを実践する場面が職場そのものであるため、ソーシャルスキルトレーニングと同様に受講者に対して「この場面でこの行動が必要だ」ということをより具体的に示しやすい。
・テーマや場面の設定にあたって、就労中に実際に見られた課題をもとに支援者と受講者が目標とするスキルを共有することができる。
・練習したスキルを活用する具体的な場面が分かりやすいため、受講者がスキルの実践に取り組みやすいと考えられます。
・ジョブスキルトレーニング実施後に職場でターゲットスキルに関する課題が見られた際は、
受講者に対してジョブスキルトレーニングで学んだ内容をもとに、望ましい行動をとるための練習を促しやすい。
まとめ
ジョブスキルトレーニング(JST)やソーシャルスキルトレーニング(SST)、生活能力を習得するライフスキルトレーニング(LST)など様々な訓練がありますが、年齢やライフステージによって必要なスキルがたくさんあるということがわかります。
その中でも、人が社会性のある生き物である以上、人と人とのコミュニケーションのスキルが最も重要なものになります。
日常生活や職場問わず、人間関係を作る時は必ず何かしらのコミュニケーションが必要になり、コミュニケーションのスキルが無ければいい人間関係はできず、あらゆる場所で孤立してしまいます。
特に職場での人間関係の悪化は離職の大きな要因となり、コミュニケーションのスキル不足が人間関係の悪化を招いてしまうこともあります。
そういった意味で、就労時という限定的な状況のためSSTに比べると身につけたスキルを使える場面は少なく思えるかもしれませんが、
職場という自宅にいる次に長くいる環境のため頻度は多く、職場のコミュニケーションに特化したジョブスキルトレーニングは必要不可欠と言えるでしょう。