この記事は、現在お子さんの学習について悩みを抱えている保護者や先生、支援者の方に向けてユニバーサルデザイン教育という新しい教育方法をご紹介します。
ユニバーサルデザインとは、「障害の有無にかかわらず、みんなが使うことを想定して設計されたもの」をいいます。
左利き、右利きでも使えるハサミや、道路など段差をなくすバリアフリーもまたユニバーサルデザインです。
発達障害におけるユニバーサルデザインは、「教育の場」でも活躍しています。
ユニバーサルデザイン教育とは
発達障害の子も通常学級に行き、みんなと同じ授業を受けます。
しかし、それでは定型発達の子と、勉強や学校内でのコミュニケーションなどさまざまな差が生じることがあります。
その差をなくそうというのが、「ユニバーサルデザイン教育」です。
みんながわかりやすく、理解の差がない教育。ユニバーサルデザインが使われた道具をそろえるだけではありません。
ユニバーサルデザイン教育は多岐にわたります。
・スケジュール表を置いたする教室環境の整備
・学校の周辺(通学路)のバリアフリー化
・学校内の段差の解消、エレベーターの設置などバリアフリ
ー化
・授業づくりの在り方
・障害理解ある校風、学級経営
・教職員が障害にたいする理解や対応力 など
ユニバーサルデザイン 5つの実例
ユニバーサルデザイン教育にはさまざまな要素があるので、担当教師の考え方や工夫などもあらわれます。
5つの事例を見ていきましょう。
国語を教えるときのユニバーサルデザイン
国語はあいまいなことが多く、ハッキリとはわかりにくいですね。
こうした国語を子ども一人ひとりが「わかる・できる」ようにするために、「内容理解」ではなく、わかりやすい「論理」を教えるようにしました。
「このとき、主人公はどう思ったか」という質問ではなく、「心情の読み取り方」や「作品の主題のとらえ方」を教えます。
つぎに授業を視覚化すること。
「○○行から○○行まで主人公の心情がわかる」と言葉で説明するのではなく、センテンスカードを黒板に貼る。
そしてカードを指さして、「この言葉が○○な心情がわかるね」といったように説明する方がわかりやすいですね。
そして「授業内容の共有化」。
ペア活動をして理解を深めたり、教師が話し合いを適度に整理します。
このような「指導の工夫」で、子どもたちの理解の差がへるようにしました。
ユニバーサルデザイン視点をとりいれた授業
中学2年の社会・地理の授業でユニバーサルデザイン教育がとりいれられました。
授業を開始するときに生徒に身の回りを整頓させて、授業に集中できるようにします。
そして、これまでの学習を振り返り、今日おこなう授業とのかかわりを教えます。
そして「旅行に行くなら、どの国がおすすめ?グループで決めよう」と題を出し、今日おこなう授業の見通しがもてるようにしました。
そして、その題について前回の授業ノートを見ながら、一人ひとりの考えをまとめさせます。
そのあとグループで共有し、明確な視点から理解を深めさせました。
また話し合いのときは手順やマニュアルを示して、誰も参加しやすいようにします。
話し合いでまとめられた意見は黒板に掲示していき、グループの意見が視覚的にわかるような工夫をしました。
黒板に印をつける
黒板をノートに写しているとき、子どもたちの中には、途中からどこを書いていいのかわからなくなり、ノートを写すのをやめてしまう子もいます。
または書き写すことに時間がかかって、授業を聞き逃すこともあります。
とくに授業の終わりほど、黒板が文字でいっぱいになり、わかりにくくなります。
そこで、小さなマークやマグネットをつかって、「ここを書いてね」というところに貼るようにしました。
すると、子どもたちの視線が泳ぐことがへり、姿勢がよくなったという報告があります。
書く場所もすぐにわかることから、書き写すスピードも上がりました。
一人に役割をあたえる
ユニバーサルデザイン教育は、障害の有無にかかわらず、一人ひとりが受け入れられ、活躍できることも大事です。
「人は自分の存在や行動がまわりに役立ったり、貢献したと感じると、自分の役割や周囲との関係を理解する」という教員の考えのもと、子ども一人ひとりに役割をあたえるようにしました。
順番性にしたり、班ごとに分担制にしたりする日直の仕事を、クラスの人数分に仕事を細かく分けて、一人一役制にしました。
自分自身のクラスでの貢献や存在について自覚できるようになり、自己肯定感を高めることにつながりました。
行事の流れや活動を掲示する
ユニバーサルデザイン化された時間割は、ちょっとちがいます。
まず朝の会で、時間割にたいして子どもたちから質問を受け、行事内容や学習内容を説明します。
そして一日の流れに見通しがもてるようにします。
また「算数」など教科だけでなく、どんなことを学習するのかも簡単に記入します。
さらに、今はどの時間か、あとは何をするのかが見てわかるようにするため、時間割表にマグネットや印をつけるようにしました。
このように、わかりやすく、見通しがもてるようになったことで、学習用具を自分から用意したり、移動がスムーズになったり、目的をもって行動する姿勢などが見られました。
まとめ
ユニバーサルデザイン教育は、学校・教員の考え方もあり、実にさまざま。
ユニバーサルデザインが取り入れられているかどうかは、子どもの成長、教育ともに大きな影響があります。
お子さんを通常学級に入学させるときは、どのように授業がおこなわれるかを見たり、学校内の校風・雰囲気や、障害への理解があるかどうかをしっかり確認しましょう。
サイト
〇平成25年 岩手大学教育学部付属学校 ユニバーサルデザイン授業実践実例集
書籍
〇ユニバーサルとデザインの視点を活かした指導と学級づくり
柘植将義・編著 金子書房・出版