障害受容とは、そのままのとおり、障害を受け入れることです。
自分が障害をもっていると知らされたとき、または自分の子どもが障害をもっていると知ったとき、すぐに受け入れられる人は少ないのではないでしょうか。
まずは「信じられない、信じたくない」と思うでしょう。
この記事では、理論としてある、障害をもった本人や家族の障害受容の過程をご紹介します。
障害受容の過程の理論
専門家たちに大きな影響をあたえたとされる2つの理論についてお伝えします。
ひとつは1978年に発表された「悲嘆過程」、つぎに1999年に発表された「障害受容過程」です。
これらのちがいを見ていきましょう。
①悲嘆過程とは
1978年、アメリカ・クリーブランドの小児科医、クラウスとケネルが発表しました。
親の感情に焦点を当てて、障害受容を5つの段階に分けました。
1.ショックの段階
障害を受け入れることがまったくできず、呆然としたり、何かを思うことができない状態です。
2.否認の段階
「そんなわけがない!」「誤診だったのではないか?」と、障害そのものを否定します。そして、このときによく見られるのが「ドクターショッピング」。
障害ではない、または別の病名をいわれたいがために、たくさんのところに診察を受けに行きます。
3.悲しみと怒りの段階
障害を受け入れようとするものの、まだ反発する心がある状況です。
「どうしてうちの子が…」と健常児とくらべてしまったり、「なにが悪かったんだろうか」と悲しみや怒りを覚えます。
4.適応の段階
怒りや悲しみが少し落ち着き、自分の子どもに障害があることを受け入れる段階です。
専門家の話を聞いたり、障害について知ろうとします。
5.再起・希望の段階
子どもの障害を受け入れ、子どもと明るい未来へ向かうために努力しはじめる時期です。
ただ、この理論を問題だと指摘する声もあります。
・この理論の中では、「すべての親は障害を知ると、まず悲しむことが正常」とされていること。
・障害にたいする悲しみは消えることなく、「慣れる」ことによって受容するのだとしていること。
・障害児がどのように感じているかがわからないこと。
②要田芳江による「障害受容過程」
「悲嘆過程」の問題を指摘し、障害受容について述べたのが、1999年、吉田芳江による「障害受容過程」です。
すべての親が障害を知って悲しむことは多いけれど、その悲しみが必ずしも障害に対するものではないことを述べました。
また、「慣れる」ことによる障害受容は、結局、後ろ向きの考えでしかないと指摘しています。
そして、親の障害への見方に焦点を当てて、障害受容を3段階に分けました。
第1段階「葛藤」
この段階では、自分を哀れんだり、子どもが障害ではないと拒否します。
その理由は、障害児にたいする社会の冷たい目を気にしたり、「障害児は価値が低い」という社会的な見方に、親である自分すらも、子どもにたいして思ってしまう悲しみです。
この段階を乗り越えるには、子どもの親への笑顔や、親以外には人見知りをするなど、「自分の子どもである」という確認が必要になります。
第2段階「受容」
障害にたいして否定的な意見をもちながらも、自分の子どもらしさを見つけて、子どもを受け入れはじめる段階です。
ただ、子ども自身は受け入れられても、「障害のある子ども」といった否定的な見方を捨てられません。
そのため、この第2段階では、なんとか親は健常児に近づけようと、療育に力をいれます。
第3段階「変革」
障害のある子どもではなく、子どものあるがままを受け入れられる時期になります。
障害児の立場になって考えることができるようになるので、社会の壁にも臆しません。
障害を劣っているとも感じません。
子どもなりの成長を願い、可能なかぎり生きやすくしようと努力します。
環境や人によって障害受容はちがう
クラウスらによる5段階、要田芳江による3段階、すべての段階をあっさりと超えられる母親もいれば、段階につまずいて挫折してしまう人もいます。
また、環境によっても左右されます。
たとえ、最後の段階にいたとしても、子どもの小学校入学、引っ越しなど新天地、環境によって大きな壁が立ちふさがり、第1、第2段階を行き来することもあります。
障害をもった本人の受容にたいしては、どうでしょうか。
クラウスらによる理論「ショック→否認→悲しみ・怒り→適応→再起」の段階を経る人もいます。
けれど、長いあいだ他者とのちがいに悩まされてきた障害者は、「自分は障害である」と認めてほしくなるため、すぐに受け入れられ、診断名を聞いてホッとすることがあります。
そして、生き方を変えて、早く「再起」に踏み出せます。
このように、人や環境ごとに障害受容はちがうので、障害を伝えるとき、相手の状況をよく見ることが肝心でしょう。
障害受容をしていくには理解者が必要
障害受容の段階を乗り越えるとき、多くは「理解者がいることが大きかった」と語ります。
同じ悩みをもつ親と交流することで、悩みの共有をして、「自分だけが苦しんでいるのではないのだ」と孤独感から救われます。
障害受容は、ひとりではできません。
障害者を見る社会の冷たい目、理解が得られない孤独感、障害児の親であるという責任、ひとりでは背負えない、重すぎることだからです。
そのため、一緒に背負っていく「理解者」がいることで、母親や障害のある子どもは生きやすくなり、前へ踏み出せる一歩となります。
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