就労準備型放課後等デイサービスで指導員をしているなか、お子さん達の「分かったフリ」をなくすにはどうしたらいいのか、
という相談をよく保護者の方から受けることがあります。

宿題や家事のお手伝いなど、お子さんとコミュニケーションを取っていると分かっていないであろうことでも「分かったフリ」をしてしまうことがあったりしますよね。

放課後等デイサービスで就労プログラムとして就労訓練をおこなっている時もそれはよくありました。

それはご家庭だけではなく学校や就労先、放課後等デイサービスなどの集団生活の場においても解決すべき問題です。

私は就労準備型放課後等デイサービスで就労訓練や就労支援施設の実習など、数多くの就労プログラムをおこなってきました。

その中で気づいたのが、その「分かったフリ」というのはお子さんの将来にはとても損していることでした。

今回は私が就労準備型放課後等デイサービスで指導員をしていく中で考えた、お子さんの「分かったフリ」を改善するための2つのポイントをご紹介したいと思います。

お子さんの「分かったフリ」の原因

子どもはなぜ分かったフリをしてしなうのでしょうか?

お子さんはなぜ「分かったフリ」、言葉を変えると「分からない」と言えないのでしょうか?

その時の状況やお子さんの心理状態によっても違いますが、2つの要因があるのではないでしょうか。

「分からない」と言う=いけないことだという認識!

まず1つ思うこととして、「分からない」というと怒られるのではないかと思ってしまっているのではないでしょうか。

分かりやすく言うと「分からない」という言葉を否定的に捉えているのではないかということです。

確かに私たち大人も日常生活や仕事においても、一度説明されたことをもう一度聞いたり、聞かれたことに「知らない・分からない」と答えるのは引け目を感じてしまうかもしれないですね。

「分からない」と言ったら怒られてしまうのではないだろうか、「こんなことも分からないのか」と失望させてしまうのではないだろうか、と考えつい分かったフリをしてしまっているかもしれません。

またそれがまわりの目を気にして恥ずかしい事だと思っていることもあるかもしれません。

お子さんもこうした怒られたくない、分からないことで相手を失望させたくないという心理が原因として考えられます。

「分からないことが分からない」という状況

2つ目に、「なにが分からないのかが分からない」というケースも考えられます。

これは、分からないことが分からないので、質問ができずに「分かったフリ」をしてその場しのぎになってしまう場合です。

障害があるお子さんは言葉や動作の理解が難しいことが多いと思います。

そこで理解ができていないと、結果として「何が分からないのか分からない状態」になってしまいます。

「分かったフリ」をし続けることは結果としてデメリットしかない!

もしこのまま「分かったフリ」をするとどうなるでしょうか?

仮にこれが他人との会話であれば相手を怒らせてしまったり、仕事であればミスに繋がったりと正直に「分からない」言った時よりも返ってマイナスな出来事になるケースの方が多いかと思います。

社会に出て働く上で、質問ができなかったり分かったフリをして仕事に取り組むことの方がリスクが大きいですよね。

それぞれの要因から「分かったフリ」への合理的配慮

ここで大切なのはまず1の場合、聞かなかったり、「分かったフリ」をすることの方が返って損をしてしまう、というのをお子さんに理解してもらうことが大切になります。

「分からないことは分からないと言ってね。質問をすることはいいことなんだよ。」とお子さんに優しく声がけをし、聞き返すことの抵抗を少なくします。

そして、お子さんがしっかり分からない旨を伝えることができたら褒めて、「分からないことを聞くことはいい事なんだ」という成功体験を持ってもらうことが大切です。

2の場合は、伝えていることが理解できていない可能性が高いので、言い方を変えてみたり、写真やイラストなどの視覚的に分かりやすいものを用意することが効果的かもしれません。

また、伝えたいことを指導者が目の前で実践してみたり、お子さんに一度やってもらうのも伝わりやすいいい方法かと思います。

最終的には理解できたかどうかを確認するのですが、その際には「はい」、「いいえ」だけではなく、お子さん主導で何がわかったかを確認するといいかもしれません。

理解できていない部分があれば表現ができないので、どこが理解できていないのか分かりやすいはずです。

ポラリスの就労プログラムでも就労訓練で使用する作業手順書をはじめ、こうした一人一人への「伝え方の合理的配慮」をおこなうことで就労プログラムに取り組みやすい工夫をしていきました。

それもあってか、お子さん達がそうした「分かったフリ」をすることなく分からないことを聞いたり、報告・連絡・相談ができるようになりました。

まとめ

就労プログラムでお子さん達への支援をしていく中で、お子さんの「分かったフリ」は、

1.「分からない」ということに否定的な気持ち

2.何が分からないのかが分からない

という2つのポイントから、お子さんがどちらの状況なのかを見極めて対処していく必要があります。

もちろんプライドの部分であったり、周りを気にしてなど他の理由もありますが、その際は自分の現状の視える化や周りの気になる人や物から遠ざけるなどの配慮も必要になりますが、多くの場合は上記の2つのポイントなのではないかと思われます。

1では分からないことはいけないことではないことやそこでしっかり言えないと自分が困ってしまうこと分かってもらうこと。

2ではその子にあった伝え方でその都度理解しているのかを本人から言葉や動作で確認をしてもらうことがよいのではないでしょうか。

もちろん伝え方の合理的配慮はお子さんによって十人十色ですが、大切なのはお子さんがしっかりと理解できる仕組みを作っていく事だと思います。

伝えたいことを理解することはお子さんの将来の就労でも大切なことです。

下記のリンクではお子さんの将来の就労において必要なスキルについての記事になりますので、参考にしていただければ嬉しいです。