この記事は、企業の障害者雇用の採用担当の方で、法定雇用率や離職率で悩んでいる方に向けて、企業の障害者雇用の成功事例をご紹介します。
身体障害、知的障害、精神障害を持つ障害者に対して、一般雇用とは別に枠を設けて雇用することを障害者雇用と言います。
企業や自治体等は法定雇用率に基づいて一定の割合の障害者を雇用することが義務付けられており、民間企業の場合は労働者数の2.2%(労働者45.5人)が法定雇用率となっています。
現在、日本での障害者の平均雇用率は2.11%で、これを下回っています。
一方で、法定雇用率を上回って障害者を雇用している企業も多くあります。別の記事ではファーストリテイリングの取組をご紹介しました。
今回は、無印良品で皆様がよくご存じの良品計画についてご紹介します。
障害者雇用企業ランキングの上位に
以前の記事でご紹介したとおり、東洋経済新報社が2019年に公表した『「障害者雇用率」が高い上位100社ランキング』(データは2017年のもの)では、良品計画は第8位で、障害者雇用の実雇用率が4.73%となっていました。
2019年2月時点で4.49%の実雇用率で、本部と店舗合わせて352名の障害者が働いています。
障害者雇用に関する良品計画の歩み
2000年は障害者の雇用率が0.41%で、ハローワークからの指導を受けたそうです。
その指導を受けて同年に社会的な責任を果たすために障害者雇用を始めました。
最初は身体障害者と知的障害者を中心に簡単な入力業務に従事することから始めたとのことです。
1つの部署に障害者を持つ社員を集め、そこに相談員等を配置していたため、障害者と関わる社員は非常に限られていました。
しかし、店舗数が増えるにつれて社員も増え、一つの部署で障害者を雇用することに限界が生じてきたため、障害者雇用を本格的に進めるための「ハートフルプロジェクト」が2009年に発足しました。
ハートフルプロジェクトでは、「働く仲間の永続的な幸せ」「仲間を信じ助け合いともに育つ」「店舗での雇用拡大および雇用定着」を目的として障害者雇用を進めています。
ハートフルプロジェクトの目標は、障害者の雇用率を義務的に上げることではなく、同社のビジョンの実現のためだそうです。
ハートフルプロジェクトの開始とともに店舗での障害者の雇用をスタートし、2015年の段階では本部で25名、店舗が190名となりました。
内訳は知的障害者が35名、身体障害者が23名、精神障害者が157名と、精神障害を持つ社員が多くなっています。
先日ご紹介したファーストリテイリングでは精神障害者の割合が少なかったので、企業によってどういった障害を持つ方を採用するかというのは様々であるということがわかります。
良品計画は精神障害者の中でも、特に発達障害を持つ方を多く採用していますが、発達障害者は比較的体調が安定していて、前向きに努力して、集中力が高い、といった長所があるため、同社の求める人物像に合致しているとのことです。
現在は、障害者の職域を拡大し、一か所に集中させるのではなくできるだけ多くの社員と共に働くという目的の下、障害者雇用を進めています。
障害者の採用
障害者の採用にあたって同社は、当初は筆記試験をおこなっていましたが、人物重視の採用に切り替え、働く意欲のある方、障害を受容できている方、無印が好き、といったポイントが重視されています。
また、2009年のハートフルプロジェクト発足時には、人事課と販売部長が面接をおこなっていましたが、2013年からは人事担当と店長の二人で面接をおこなっています。
店長が最初から面接に関わることで、よりよいマッチングが可能になりました。
先日ご紹介したファーストリテイリングでは店長が採用をおこなっているとのことでしたので、ここでも企業ごとの取組に違いが見られます。
いずれにしても、店舗で働く障害者を採用するにあたっては、実際に一緒に働くことになる店長が採用に関与することが重要であると言えるのではないでしょうか。
障害者雇用を促進したことで得られたこと
障害者雇用をおこなうことによって、様々な変化が見られています。
例えば、発達障害のある方は曖昧な表現や曖昧な指示が苦手であることを踏まえて、指示をする側も明確な指示ができるようになり、混乱がないように店内を整理整頓することによって全体の業務が効率化されたというメリットがあったそうです。
また、品出しがうまくできない発達障害を持つ社員がいた際に、ジョブコーチからは教える側のスキルが足りないとの指摘を受けました。
教える側は受ける側の問題だと思っていましたが、実際には教える側にも課題があったということが明らかになりました。
障害のあるなしに関わらず、相手のことをきちんと理解して、共に成長していくことができるようになったようです。
まとめ
今回は、前の記事でご紹介したファーストリテイリングの取組とも比較しながら、良品計画の障害者雇用についてご紹介しました。
ここで言えることは、一言に障害者雇用と言っても、どういった障害を持つ方を採用するのか、採用した障害者がどういった業務に携わるのか、といったことは企業によって異なるということです。
障害者雇用に関して先進的な企業の取組を参考にしながら、必要に応じて公的機関の支援も受けて、それぞれの企業に合った障害者雇用のあり方を進めていっていただきたいと考えています。