障害のある人の就職活動において、一般雇用での求人に頼るだけでは不利になってしまう場合や就労の機会を十分に得ることはできないのが現状です。
そこで、企業や公的機関が障害のある方だけを対象とした特別枠を設け、採用を行うことがあります。
近年では、障害者雇用促進法という法律によって、一定の規模の企業は法で定められた割合で障害のある人を積極的に雇用しなくてはいけないという決まりがあり、障害者雇用が積極的に取り入れられています。
障害者雇用とは
障害者雇用とは、障害のある人が就職活動の際に不利になったり十分な働く機会を得られなかったりということを防ぐために、企業あるいは公的機関が一般雇用とは別に「障害者雇用枠」と言われる障害のある人だけを対象にした特別な採用枠を設け採用をすることです。
企業には「法定雇用率」と言われる法律で何人まで障害のある人を雇うという決まりがあり、その法定雇用率も民間企業や公的機関により違います。
障害者雇用の法定雇用率について
各機関における障害者雇用の法定雇用率は以下のようになります。
一般の民間企業 | 2.0% |
特殊法人 | 2.3% |
国及び地方公共団体 | 2.3% |
都道府県教育委員会 | 2.2% |
障害者雇用の対象となる人は?
障害者雇用の対象となるのは基本的に、障害者手帳を持っている人です。
障害者手帳も障害によって種類が違い、身体障害者の場合は「身体障害者手帳」、知的障害者の場合は「療育手帳」、精神障害者の場合は「精神障害者保健福祉手帳」がこれに該当します。
従来は身体障害のある人と知的障害のある人に限られていましたが、2018年から精神に障害のある人も対象になりました。
障害者雇用と一般雇用の違い
障害者雇用は文字通り企業や自治体に障害があるということを前提に採用されているため、障害の特性やその時の体調などの配慮をしてもらいやすいです。
そのため、職場環境が合わなかった場合、業務における配慮や設備投資などをしてもらえることが多いです。
通院などのやむを得ない理由であれば休みも取りやすく、同じ障害者雇用で採用された人たちと仲良くなれるケースも多いです。
ただ、一般雇用とは違い、求人が一般雇用より少ないのが現状です。
そのため業種も少なく、希望する職種がなかなか見つからないこともあります。
業務内容は事業によって異なりますが、障害者雇用においては仕事の領域が狭く、それも軽度の作業のものが多くなっています。
そのため自分に合っている仕事なのかを事前によく確認しておくことが重要になります。
また障害のある人の就労を支援するツールとして「サポートブック」や「就労パスポート」というものがあり、自身の障害特性や必要な配慮が記載されているので提示することで職場で多くの方から理解と配慮を受けることが出来ます。
また、近年ではIT化やAI化が進むことによって「テレワーク」などの新しい働き方によって障害者の雇用が増えつつあります。
また、業務をロボットが代行する「RPA( ロボティック・プロセス・オートメーション )」も導入され始め、そのRPAのメンテナンスをする「RPAエンジニア」という職業も障害者雇用において増えてくると思われます。
こうしたITスキルは就労移行でもおこなっているところが増えてきました。
障害者雇用で就職するためには
障害者雇用として就職するためには多くの働くためのスキルが必要になります。
そのため、「就労移行支援事業所」を利用し就労訓練や働くことについての学びを2年間で勉強し、障害者雇用として就職するというケースが多いです。
また早期から働くことについて学べる施設として「就労準備型放課後等デイサービス」があります。
この就労準備型放課後等デイサービスは就労移行支援事業所の放課後等デイサービス版に当たるようなところで、在学している中学生や高校生までのお子さんが放課後等デイサービスとして楽しみながらも働くスキルや知識を学ぶことができる特化型放課後等デイサービスです。
こうした就労移行支援事業所を利用することで働くスキルの習得だけでなく、就職した後に職場でしっかり定着ができるような定着支援のサービスを受けることができます。
障害者雇用での就職を目指されている方は利用を検討してみるのもいいかもしれません。
障害者雇用は対象だけど一般雇用はダメなの?
障害があり、手帳を持っていている人でも一般雇用の採用を目指すこともできます。
一般雇用枠の企業の募集要項に沿っていれば一般採用でも働くことができ、求人や募集している業種の数も多くあります。
しかし障害に関しての告知は自己責任になりますので、告知をしなければ企業としての合理的配慮はなく、告知しても企業の障害に対する理解度も企業によって様々なので、就職してみての職場環境のギャップもあるかもしれません。
障害がある方の一般雇用での離職率は障害者雇用に比べると高くなるというデータもありますので、採用担当者に相談してみるといいかもしれません。
まとめ
障害があるからといって、障害者雇用が適用される職場だけしかいけないと決めつけることはないと思います。もちろん障害の程度も関わりますが、一般雇用への道を選択することも可能です。
重要なのは自分の仕事がずっと続けられるかどうかです。障害者雇用でも一般雇用でも職場環境がよくなかったり続けられない仕事が原因で大きなストレスを抱えてしまったりではよくありません。
就労するにあたって自分自身の障害特性と自分のやりたいことを考え、それを実現するためにどこで折り合いをつけるかが大事です。
自分一人で考え迷ってしまったら、周囲の方に意見やアドバイスを求めてみるのもいいかもしれません。